握り飯と獲物を交わす山男
どんな伝承か
御岳の森林地帯で伐木作業の人夫が弁当を開いたり握り飯を焼いたりしていると、蓬髪に赤ら顔の半裸の巨人がのっそりと近寄り、じっと米の飯を見詰めていることが昔はよくあった。決して手は出さず、飯を与えると図体に似合わぬ無邪気さで喜んで食べ、礼に数人がかりの巨材を一人で軽々と運ぶ。だが約束を違えて飯をごまかすと、たちまち怒って材木を振り回したという。秋神の猟師が山中でこの巨人に会い、握り飯を差し出すと大猪を突き付けて返した。以来毎日交換を続けたが、不審に思った仲間が先回りして発砲する。後日、谷底には巨人の骸が横たわり、大きな山女が泣き叫んでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。