鬼が一夜で築いた一夜山
どんな伝承か
一夜山は戸隠連峰にあり、標高は一六五二メートル。鬼無里の里の中央に高くそびえ、この山は一夜のうちにできたと伝えられている。そのため古老は夜出山、あるいは一夜山と呼ぶ。鬼無里の里は昔から風光にすぐれ、四方を険しい峰に囲まれた要害の地であったので、天武天皇はここへ都を遷そうとされた。設計がすっかり整ったとき、この山に棲む鬼たちは、仙境を都にされては自分たちの棲み処がなくなると考え、遷都を妨げようと一夜のうちに山を築き上げた。妨害は功を奏し、天皇はやむなく遷都を思いとどまられた。しかし鬼の仕業をひどく憎まれ、のちに阿部比羅夫へ命じて一夜山の鬼を残らず退治させたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。