鯉幟も立てぬ大井の鯉の禁忌
どんな伝承か
松尾の眷属の神が保津川をさかのぼり、鯉の背に乗って『しょうりん島』へ着いた。村人はその地に社を建てて祀ったが、大井の里に祀れという夢のお告げがあったので、さらに社を移したという。それ以来、大井村では鯉を氏神の使いとして決して食べない。川漁に出ても鯉だけは獲らず、よその土地へ行っても口にしない。氏子が万一これを食べれば、たちまち激しい腹痛に襲われるといわれる。節句に鯉のぼりを立てないのはもちろん、紙に描かれた鯉の絵さえ近づけないほどに徹底しているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。