大蛇となって池へ去った母おとら
どんな伝承か
滋賀県坂田郡米原町(現米原市)の伝承として集録されているが、物語自体は多賀の久徳村を舞台とする。むかし、久徳村の庄屋夫婦は仲がよく、妻のおとらは絶世の美人であった。臨月を迎えたある日、お産の場を見ないでほしいと夫に頼んだが、庄屋がのぞき見ると、六畳の間いっぱいの大蛇となって子を産んでいた。正体を知られたおとらは家を去り、会いたくなったら霊仙山の七角の池にいる、この子が七つになるまで育ててほしいと言い残した。娘が七歳になった年、庄屋が池へ連れて行くと、大蛇の姿のおとらが現れ、娘とともに池の中へ姿を消したという。この池はのちに「おとら池」と呼ばれるようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。