稚児ヶ淵の岸で生まれた赤子
どんな伝承か
大萱には稚児ヶ淵と呼ばれる淵があった。幟竿を差し入れても底に届かないほど深く、周りは崖が切り立って、見るからに恐ろしい場所だったという。近くの村にたいそうな美男の武士がおり、村の娘と情を通じて娘は身ごもった。思い悩むうちに腹は人目につくほど大きくなり、娘は死ぬほかないと覚悟を決めて、泣きながらこの淵まで歩いてきた。ところが淵に着いたとたん、赤子が生まれたのだった。淵の大石の上には、馬の足跡と稚児の歩いた足跡が残っていたと語られる。
原典より
〈柳田―「稚児淵」〉昔、大萱に稚児ヶ淵という名の淵があった。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。