縁先の声と一夜で描かれた天狗の絵
どんな伝承か
網野町に住む郷土史家井上正一が、今は亡き畑中亀治から直接聞いたという話。今井部落の兵藤家は代々医者であったが、ある晩、客間の縁先で声がして「ヨシノリを主客として酒もりを催せ」と聞こえたので、さっそく大勢の人を招いて酒宴を催した。その後また声があり、「硯と用紙を外に出しておけ」と聞こえた。そこで墨をすり、用紙とともに縁先へ出しておくと、翌朝には狗賓さん、すなわち天狗の絵が描かれていた。翌日も同じようにするとまた同じような絵が書きつけてあり、村内の者が伝え聞いて懇望するので分け与えたという。
原典より
その後また声があって、『硯と用紙を外に出しておけ』と聞こえた。—— 日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年))
『日本神異見聞伝』は、笠井鎮夫が昭和四十九年に著した霊異の見聞記である。第一篇では、大正期に大本で鎮魂帰神を受けた著者が、霊媒による死者の招霊や狐霊・竜神の託宣、霊石の発掘などを研究会での語りの口調で伝える。第二篇では、慶応三年のええじゃないかのころ尾張・遠江・駿河・美濃・丹後などで起きたお札降りを、旧家の古文書や郷土史家の便り、著者の現地調査から記録している。