鱗を剥がし損ねた宮本のおくまが池
どんな伝承か
宮本谷野の里におくまという美しく気だてのよい娘がおり、貧しいが働き者の小四郎と一緒になって女児をもうけた。その日からおくまは満月が近くなると夜半にこっそり出かけるようになり、後をつけた小四郎は、弁天山の山頂近くの小さな湖でおくまが着物を脱ぎ、右手に銀鱗が光っているのを見た。おくまは、自分の本性は白蛇で、児を生めば大蛇に戻らねばならず、人間として永住するにはこの湖で鱗を一枚ずつはがして戻さねばならない、今夜が満願だが見られた以上は戻らねばならぬと語り、子が腹をすかせたら湖に生える若草の汁を飲ませてほしいと言って湖に消えた。のちその湖に「じゅんさい」が自生し、村ではこれを食用として、この池をおくまが池と呼んでいる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。