雪駄を残して蛇体となった大藪の娘
どんな伝承か
昔、大藪の沢家の娘が大山田村の阿波へ嫁入りをした。やがて子が生まれ、その子を子守の少女に背負わせて大藪の実家へ里帰りした。帰り路、蛇池の近くで子守が水を飲みにある家へ立ち寄り、引き返してみると女主人の姿が見えず、もと居たところにコンゴウという雪駄が揃えて脱いであった。子守が池に向かって顔を見せてくれと叫ぶと、女は十二本の角を生やした蛇体の姿で水面に現れた。そのとき大藪の実家では床の間がゴーと鳴り、掛物のところに鱗が散った。雪駄の脱いであった谷をコンゴー谷といい、コンゴー松という木もある。蛇池の中の島には弁天が祀ってあり、明治十年代には池の水が眼病に効くという噂で汲みに来る人が多かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。