菖蒲湯で千疋の小蛇を産んだ娘
どんな伝承か
昔、刈田郡蔵王町の宮のあたりに、母娘二人暮らしの家があった。毎夜のように娘のもとへ美男の若衆が忍んで来る。母が問いただしても、どこの誰かわからないという。母は化生の者らしいと考え、今夜来たら気づかれぬように長い糸を針で袴の裾に縫いつけよと教えた。娘がそのとおりにし、翌朝二人が糸をたどって行くと、裏山の大木のところまで続いていた。根元の穴から呻き声とともに「おれは死んでも、子供千疋つくったからこの世に未練はない」と聞こえた。母娘は驚き、部落の寺の和尚の教えに従って菖蒲とよもぎの湯を沸かし娘を入浴させると、体から小蛇が千疋出てきた。若衆は蛇の正体をあらわして死んでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。