九品寺から飛ぶ生婦火の火の玉
どんな伝承か
三重県の阿山地方に伝わる話である。女が赤児を産むときには産室を別にし、家族とは別の釜や鍋で煮焚きし、火も新たに起こすものとされていた。ところが中坊飛騨守なる者は、一人娘の利姫が産をするとき産室を設けなかった。利姫は意外の難産で、母子ともに死んだ。九品寺に葬ると、毎夜半、二つの火の玉が寺を出て飛騨守の館に入り、明け方には地上すれすれに飛びながら寺へ戻った。そこで急いで大追悼をしたという。これを生婦火と呼ぶ。産の穢れに関わる怪火である。
原典より
九品寺に葬ると、毎夜半、二つの火の玉が寺を出て、飛騨守の館に入った。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。