碁の賭けで僧良順から金を巻き上げた素麺屋
どんな伝承か
御一新も近い幕末、贋金が造られていたころのこと。伊賀上野の浄土宗の末寺心念寺は住職が亡くなって後継ぎがなく、本寺にあたる柘植の徳永寺の若い僧良順が留守居をしていた。ある夕方、寺の一室を借りている素麺屋が早めに戻り、碁を打とうと誘った。百文を賭けると良順が続けて勝ったが、素麺屋が賭け金を二分に上げたとたんに形勢が変わり、一両まで張った良順はなけなしの金をすっかり巻き上げられた。その夜、師匠の静永方丈に僧にあるまじき悪行だと叱られる夢を見た。翌日、古道具屋から、素麺屋は初めわざと負けて相手を釣ったのだと聞かされ、良順は仕返しを考えた。
原典より
『僧侶にあるまじき悪行だ、』と、底力のある犬きな 心りつけた。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。