若水を汲む神女を驚かせた平田の夫婦井戸
どんな伝承か
この井戸は一名を宝徳井戸ともいい、島ヶ原村町区平田の二井道路の左右にあって、近くの人々が飲料水に使っていた。毎年正月元旦の朝、神女がどこからか来てこの井戸水を汲み、また姿を消すと伝えられ、里人は汲み残しの水を若水として飲み、家内安全と延命を祈る正月の儀式にしていた。ある年の元旦、土地の若者が神女を驚かそうと井戸の傍の二股の柏の木に登って待ち伏せし、神女が若水を汲もうとしたところで大声で叫んだ。神女は立ちすくみ、やがて「これから先この土地の者が永住できないようにする」と捨て言葉を残して北の山裾へ逃げ去った。以後神女は現れず、賑やかだった平田の里も次第に淋しくなり、神女の逃げた山を里人は姫山と呼ぶようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。