三粒の米が鍋を満たした若水の由来
どんな伝承か
昔、或る所に大層貧しいが慈悲深い若松という男があった。或る年の年越の日、木を伐って貯めたわずかな銭を持って年取り仕度に町へ行く途中、野原で子供らが狐を捕らえて責めているのを見た。若松は持ち合わせの銭をみな出して狐を買い取り、人目のない所で放してやった。銭がなくなり米も魚も買えぬまま家に帰り、元朝になっても食う物がない。米櫃をひっくり返すと米粒が三粒こぼれたので、水を汲んで来て大鍋で炊くと飯が鍋いっぱいになった。以来毎朝早く水を汲んでは飯を炊き、めでたい正月を過ごした。家ごとに若水を汲むのはこの由来だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。