三十六歳半の怪我を告げた手相
どんな伝承か
著者は岩手県で知り合った英国人から手相の見方を教わり、釜石の試験場で人の手を見ては面白がっていた。ある日、近所の塩たき人夫が手を見てくれと訪ねてきた。定規で測って出した結論は、三十六歳と半分くらいで怪我をし、それが命取りになるというものだった。人夫は青ざめ、二か月前に盛岡で自動車にはねられたこと、近ごろ胸が締めつけられるように苦しいことを明かす。年齢はちょうど三十六歳と六か月であった。医者に通うよう勧め、通りすがりに様子を尋ねると悪化はしていないと笑っていたが、二か月ほど後、塩たき工場の前で同僚から一週間前に死んだと聞かされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。