池に沈んで蛇となったお亀
どんな伝承か
昔、奈良県宇陀郡曽爾村に働き者の農夫がおり、妻の名をお亀といって、女児が一人いた。五月頃、お亀は決まって夜に家を出るので、不審に思った夫が後をつけると、物置から持ち出した白衣を着て、太郎生との境にある池へ飛び込んだ。問いただすと、自分は生まれながら蛇の性があり、子が満一歳になるまでに天上へ登ろうと思い立ったのだという。やがてお亀は夫の知らぬ間に池へ身を沈め、蛇と化して消えた。夫が幼女を抱えて池へ行き名を呼ぶと、白衣のお亀が現れて乳を与えたが、七日目の夜には大蛇となって現れ、夫は幼女を抱いて逃げ帰った。以後この池をお亀池といい、お亀の子孫は曽爾村に残っているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。