寛弘寺へ帰ろうと泣いた石地蔵
どんな伝承か
寛弘寺村の村はずれに石地蔵が立っていたが、隣の神山村の人々が欲しがるので、ある年これを譲った。神山村では大変喜んで祀ったところ、南を向けて据えた地蔵が、翌朝になると北の寛弘寺村の方を向いている。初めは誰かの悪戯だろうとその都度直していたが、あまり続くので、ある夜、村人が地蔵の脇の草叢に隠れて見張った。すると真夜中、地蔵は寛弘寺へ帰ろうと泣いたという。故郷へ帰りたくて毎晩向きを変えていたと知れたので、村人たちは地蔵をもとの寛弘寺村へ返したと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。