一言主の讒言で終わった葛城の石橋
どんな伝承か
昔、役の小角という仙人があった。紀州友ヶ島の山奥の洞に隠れて密教を修め、父の高加茂真影麿の菩提を弔うため、葛城の山峰二十八里に一里ごとに法華経二十八巻を納めることにし、経塚を立てるため雲に乗って山から山へ渡っていた。あるとき小角は、金峰山から葛城山の峰へ橋を架ければ往来が便利になると考え、山の神々を集めて峰から峰へ石橋を架けるよう命じた。その中に一言主という醜男の神がいて、嘲られるのを嫌い、夜になってから働いたので工事がはかどらない。怒った小角は一言主を深い谷底へ投げ込んだ。恨んだ一言主は朝廷へ謀叛の讒言をし、小角は捕えられて伊豆へ流された。石橋は一部を架けかけたまま終わり、平石の葛城山頂には今もその名残の石が積まれているという。
原典より
<高木―「岩の掛橋」・柳田―「橋杭岩」>昔、役の小角と云ふ仙人があった。—— 日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。