竜頭ヶ滝で泳ぎを覚えた名馬池月
どんな伝承か
飯石郡松笠村の竜頭ヶ滝の近くで、一軒の農家の馬が仔を一匹産んで死んだ。残された子馬は母を慕い、滝壺のほとりをさまよううちに、水面に映る自分の姿を母と思って飛び込んだ。毎日これを繰り返すうちに泳ぎを覚え、飼主は池月と名づけた。治承三年、阿須那の牛馬市へ馬喰に連れられて都賀本郷まで来ると、江川は大水で渡れない。池月は激流に飛び込んで一文字に川を横切り、都賀西から宇津井へ出て市場まで走った。市場で捕えられて樫の大樹につながれ、持主は買手がつかず口羽の長田まで戻ったが、そこで六百両の大金で売れた。のちに鎌倉の将軍が買い取り、生唼と改めて宇治川の合戦に用いられたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。