年々太る厳島明神の御神体
どんな伝承か
島根県邑智郡大和村(現・美郷町)の大字上野飯谷には、かつて厳島神社があった。いまは都賀本郷八幡宮に合祀されている。藤原寅太郎という人の祖先が安芸の厳島へ参詣した帰り、懐に覚えのない小石が一つ入っていた。神職に事情を語って神勅を請うと、我は厳島明神である、飯谷の山の麓に祀れば永くこの地を守ろうと告げられ、祖先は石を持ち帰り社ヶ谷に祀った。参詣者は絶えなかったが社地が狭く道も悪いため移転が議されていたところ、大雨の一夜、轟音とともに社は土地ごと二三町下へ動き、傷ひとつなかったという。飯谷は二十戸に満たない僻地ながら火災がなく、田の蛭も人に吸い付かず、御神体の石は年々太って今は一抱えあると伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。