袂に入り込んだ宮島の石と太郎左衛門
どんな伝承か
福山市駅家町の下山守にある厳島明神は、石を神体としてまつる。昔この村に太郎左衛門という男がおり、毎年安芸の宮島へ参っていた。年老いて今年限りと心を決め、名残を惜しみながら帰る船で袂に手を入れると、小石が入っている。若い者の悪戯かと海へ投げ捨てたが、また袂に石がある。明神が入れたものかと思いつつ横になっていると、うるわしい明神が枕もとに立たれた。太郎左衛門は宮島の方を伏し拝んで家へ帰る。話を聞いた村人は小祠を建ててまつった。袂に入るほどだった石は、いまでは高さ一尺七、八寸に育ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
広島県史 民俗編――伝説の分布(広島県(編)・広島県史)
『広島県史 民俗編――伝説の分布』は、広島県が編んだ県史民俗編のうち、「休養と娯楽」の部に置かれた「伝説の分布」の章である。八幡信仰にかかわる聖蹟伝説や炭焼長者、厳島をめぐる石神やうつぼ船の伝説、和泉式部・虎御前・菖蒲前を語り歩いた巫女の伝説、人柱や竜蛇の伝説などを、『芸藩通志』『福山志料』などを引いて論じる。「八幡信仰の流れ」「厳島伝説の周辺」「巫女と伝説」「県北の伝説」の四節からなり、伝説の名を見出しに立てて所在地とともに述べる。