久井の稲荷で年ごとに太る出雲石
どんな伝承か
三原市能地の孝行息子は、毎年母を連れて出雲へ参り、あわせてよい嫁が来るようにと祈っていた。道すがら必ず久井町の稲荷にも参るのが常だった。ある年の帰り道、母を苗籠の片方に、出雲で拾った石をもう片方に載せ、天秤棒でかついで久井まで戻った。ここから先は母も歩けるので、苗籠も棒も石もその場に置いて家へ帰る。翌年の正月に稲荷へ参ってみると、捨てたはずの石が去年より大きくなっていたという。備後ではこうして太る石を出雲石と呼びならわしてきた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
広島県史 民俗編――伝説の分布(広島県(編)・広島県史)
『広島県史 民俗編――伝説の分布』は、広島県が編んだ県史民俗編のうち、「休養と娯楽」の部に置かれた「伝説の分布」の章である。八幡信仰にかかわる聖蹟伝説や炭焼長者、厳島をめぐる石神やうつぼ船の伝説、和泉式部・虎御前・菖蒲前を語り歩いた巫女の伝説、人柱や竜蛇の伝説などを、『芸藩通志』『福山志料』などを引いて論じる。「八幡信仰の流れ」「厳島伝説の周辺」「巫女と伝説」「県北の伝説」の四節からなり、伝説の名を見出しに立てて所在地とともに述べる。