宮島から持ち帰った石が黄金に変わる
どんな伝承か
深安郡加茂の里に、嘉兵衛という吝嗇な大金持ちがいた。豊作の年、村人がそろって宮島へ礼参りに出ることになったが、嘉兵衛と連れ立つ者はいない。ただ一人、村で最も貧しい重松が声をかけたので、しぶしぶ同行した。嘉兵衛は道中も金をせびられはしないかと気が気でなく、参詣もそこそこに帰ろうとして小石につまずいて転んだ。腹を立てて石を海へ捨てようとすると、重松は海の神に無礼だと止め、土産代わりに持ち帰った。神棚に据えておくとその石は次第に大きくなり、棚に載らなくなる。抱えおろしてみれば黄金の塊で、重松は国一番の分限者となった。一方の嘉兵衛は蔵の米を鼠に食われ、家も山も荒らされて身代を潰したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。