死助権現の石をめぐる村境争い
どんな伝承か
著者の村と隣村栗橋村との境の山に、ややピラミッド形をした高い山があり、死助権現という。その頂上に石の権現頭が両村を等しく見下ろして鎮座していたのを、向こうの村の衆がこれは我が領分の物だと言い立て、由緒を並べながら村総出で千曳にかけて自分の村の側の山腹まで引き下ろしてしまった。著者の村の衆も黙っておらず、村中に触れて死助峠まで押し出したが、よく調べると台石にあの村の某という昔の人の寄進と刻まれていたので、こちらの負けとなった。そんな石が欲しければいくらでもやると言って、若者たちは頂上から大石をいくつも転がして引き返したという。人気がいやに殺気立っていた頃の話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。