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夜の松原で岩おこしを盗った狐

所在地広島県三原市糸崎町
年代大正四年初春
登場西村君
出典日本怪談実話

どんな伝承か

大正四年の初春、電気器具を商う西村が大阪からの帰り、下関行の三等急行で山陽線の糸崎駅に降りたのは夜の十二時を少し廻った頃であった。家は三原町だが急行は三原駅に停まらないので糸崎で降り、人力車で帰るはずが客待ちの車が一台もいない。糸崎の町外れから三原町の入口までの半道あまりは、田圃に囲まれた人家のない淋しい松原である。西村は子供の土産の岩おこしを抱えて歩き出した。糸崎と三原のちょうど中ほど、路が小山でくの字に曲がるあたりで艶めかしい声がして若い女が追い越して行った。追うと女はおらず、小山の上には大きな狐がいた。小石を投げると狐は去ったが、岩おこしは無くなっていた。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))

『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。

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