片川谷で鏡を撃たれた山女郎
どんな伝承か
美馬郡一宇村の漆日浦に龍之助という猟師がいた。ある年、片川谷の奥の中の滝あたりに入り、毎日鹿や猪を撃っていたが、獲物のない日に岩に腰かけて向かいの崖を眺めていると、深山に不釣り合いなほど美しい女が後ろ姿で立っていた。笠をかぶり、長く垂れた髪の先は釣針のように曲がっている。女は笠を脱いで座り、大きな鏡を前に肌を脱いだ。その肌の白さに龍之助は大化物だと察して鉄砲を二、三発撃ったが、女は身じろぎもしない。最後の弾を鏡めがけて放つと命中し、女は倒れて谷底へ落ちたという。これは山女郎で、龍之助は以後猟をやめたと伝わる。
原典より
漆日浦に猟師龍之助という者がいた。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。