町を歩き赤子の声で泣くショウゴはん
どんな伝承か
美馬郡半田町の東久保に住む平田重市は、明治四十一年の生まれである。子供のころ、オギャナキのショウゴはんと呼ばれる奇妙な老人の姿を何度も見た。丹前のような短い古着をまとい、手ぬぐいでほおかぶりをして町中を歩きまわり、ときおり両の掌をラッパのように口へ当てて、オギャッ、オギャッと赤子の泣き真似の声を張り上げる。おとなしい質で悪さをするわけではなかったが、幼い者には薄気味が悪く、東久保では親が子を叱るときに、泣いているとショウゴはんが来るぞ、と決まり文句のように使った。どこから来るのかは、半田町南部の旧奥山村の者とも、西隣の三加茂町中庄の者ともいわれ、確かな素性を知る者はいなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。