蛇渕の女が踊る雨乞石
どんな伝承か
愛媛県南宇和郡一本松町の増田川には、増田橋のそばに蛇渕という渕がある。かつて蛇が主として棲んだことからこの名がついた。ある時、牛に似た怪物が現れて山や田畑を荒らし回ったため、百姓たちは法印に頼んで渕へ怪物を封じる願をかけ、経本を埋めた。以後、怪物も蛇も姿を見せなくなったという。日照りの年には人々が渕の前に集まり、蓑笠をつけて火を焚き、降雨を祈った。ある夏、どれほど祈っても雨が降らないとき、一人の女が渕のそばの石に上がって踊ると、たちまち空が曇って大雨になった。以来この石は雨乞い石と呼ばれ、雨乞いのたびに女が石の上で踊る習わしになった。近年の埋め立てで渕は小さくなり、石も失われたと伝わる。
原典より
<柳田——「雨乞石」>増田橋の近く増田川に蛇渕と呼ばれる渕があります。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。