弟橘姫をしのぶ君越と恋塚
どんな伝承か
旧甲州街道を犬目から鳥沢の方へ二十分ほど歩くと、恋塚という名の部落がある。その手前、街道がゆるやかにふくらむあたりを君越と呼ぶ。どちらの地名も、日本武尊がここを通った故事に由来するという。尊は、相模から上総へ軍船で渡ったとき、みずから海神のいけにえとなって波を静めた妃の弟橘姫を思いつづけながら、この地を越えていった。それで君越の名がついたと伝える。君越を過ぎると扇山が高くそびえる。尊が仰ぎ見たので仰ぎ山と呼ばれ、のちに扇の形に見えることから扇山に変わったという。尊はこの山の麓の眺めのよい地点に塚を築き、姫の霊をまつった。それが恋塚で、今も碑が残る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。