山吹を差し出した娘と紅皿塚
どんな伝承か
応仁のころ、京の争乱を避けて武蔵へ下った武士が豊島郡高田村に住んだ。先妻の娘は歌を好む器量よし、後妻の娘は不器量で、近隣の者は姉を紅皿、妹を欠皿と呼び分けた。継母に憎まれても紅皿は親に孝を尽くしたという。鷹狩りの途中で雨に遭った太田持資が雨具を借りようと門口に立つと、紅皿は黙って庭の山吹の枝を差し出した。その心を後から近臣に教えられた道灌は己の不明を恥じ、彼女を歌の友とした。道灌の死後、紅皿は尼となって大久保のあたりに庵を結び、没した地に葬られた。その塚碑が紅皿塚だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。