夏の雪が教えた竜の居所
どんな伝承か
埼玉県入間郡大井町の伝え。坂上田村麻呂が蝦夷征伐へ向かう途中、坂戸あたりの農民から岩殿山の竜を退治してほしいと頼まれた。ところが竜の居場所が分からず、岩殿観音に願をかけたところ、六月の末だというのに雪が降り、物見山から見渡すと一か所だけ雪の積もらない場所があった。そこに竜がいて、田村麻呂はこれを退治した。その折、たいそう寒かったので街道筋の農民たちが麦藁を焚いて軍勢を暖めたという。大井町では、のげいぶしと呼んで、近年まで七月一日に大麦の穂先を焚いていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。