九九本で力尽きた鬼と鬼鎮様の宮
どんな伝承か
川島に刀を打つ鍛冶屋が住んでいた。ある日、若い男が訪ねてきて刀作りを教えてほしいと頼み、鍛冶屋はこれを許した。男は夜も眠らずに励み、やがてよい刀を打てるようになる。男が主人の娘を嫁にほしいと願うと、主人は一晩に百本打てたらやろうと答えた。約束の夜、男が槌を振るうと刀は次々に積み上がる。心配した主人が覗くと、そこにいたのは角の生えた鬼であった。主人は鶏小屋へ走って鶏を鳴かせ、夜を明けさせる。刀は九九本で止まり、鬼は槌を握ったまま倒れて死んだ。主人はあわれんで亡骸を庭の隅に埋め、鬼鎮様という宮を建ててまつったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。