住職に化けていた建長寺の古狸
どんな伝承か
山梨県西八代郡市川大門町黒沢の伝え。昔、古狸が鎌倉の建長寺の住職を食い殺し、自分がその住職に化けていた。供を連れて諸国を巡ったが、行く先々の村で犬はみなつないでおけと言いつけ、泊まった家では奥座敷に陣取り、給仕は要らぬと人を下がらせた。不審に思って隙間からのぞくと、飯も汁も膳にぶちまけ、長い舌で舐めていた。この住職は黒沢の高野某の家に泊まって恵比寿大黒の絵を描き、富士川を下って駿河へ出たが、路傍に置かれた籠から猛犬に引き出されて噛み殺され、七日目にようやく古狸の姿へ戻ったという。絵はいまも高野家に残る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。