水棚に立った万寿姫と大蛇退治
どんな伝承か
仁平二年九月九日、武雄第三代の領主後藤助明が重臣を真手野の館に招いて重陽の節句を祝っていると、有田郷の百姓三人が訴え出た。白川の池に大蛇が住み、七俣の角を振って黒雲に乗り黒髪山へ飛び、火を吐いて人を殺すという。助明は軍勢を繰り出したが大蛇は現れず、朝廷に奏して川古の御所にいた鎮西八郎為朝と力を合わせよとの勅を得た。里人の献策で池に水棚を組み、高瀬の松尾家の娘万寿が人身御供に立つ。助明と為朝の矢が眉間と右眼を貫き、谷へ落ちた大蛇は梅野村の座頭海正坊がとどめを刺した。弟の小太郎は家を再興し、姉は高瀬の万寿観音に祭られたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。