無目籠が船出した隼人塚西の籠山
どんな伝承か
瓊々杵尊と木花咲耶姫の子である火須勢理尊と彦火々出見尊は、それぞれ海と山を治めていた。ある日、幸を取り替えて出かけたものの獲物はなく、弟は兄から借りた釣針までなくしてしまう。佩刀を潰して多くの釣針を作り差し出しても兄は受けつけず、困り果てているところへ塩土翁が現れ、無目籠という船に弟を乗せた。その船出の場所が、今の隼人町の隼人塚から西にあたる籠山だと伝えられる。船は綿津見神の宮に着き、弟は娘の豊玉姫を娶って三年ほど暮らしたのち、赤目の魚から釣針を取り戻して帰った。授かった干珠と満珠を用いて兄との争いを制し、兄は子々孫々まで朝廷に仕える守護人となることを誓ったという。彦火々出見尊は後に父に次いで皇位に昇ったとも語られる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。