岩屋の鹿が生んだ天智帝の后
どんな伝承か
その山には岩屋がある。白雉元年、仙人がその窟の中に住んで修法錬行していたところ、鹿が来て法水をなめ、ついに口の中から美しい女子を産んだ。仙人はこれを育てて智通という高僧に与えた。女子は二歳のとき鎌足公が引き取って養育し、十三歳になった。麗しく美しいので天智帝の后に立てられ、たいそう寵愛された。そのため六宮の妃嬪が深く妬み、害しようとまでしたので、后はひそかに江州志賀の都を出てこの郷へ帰り、そこで生涯を終えた。霊廟を山の麓に建て、天皇の霊廟をその左に建てて西の宮と号すると記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。