桐の箱に納めよと告げた嫗嶽の大蛇
どんな伝承か
豊後国直入郡の嫗嶽に歌姫という美女が住んでいたが、そこへ毎晩男が通ってきた。素姓が分からないので母と娘は着物に針を刺し、翌朝、小手巻の糸を印にたどっていくと嫗嶽の岩屋の穴に着いた。大蛇がうめいており、「おことの腹に我が胤を宿した卵三個がある。のちには名高き弓取りとなろう。三つの卵を産んだら桐の箱に収め、七日七夜蓋を開けるな。箱の中で打物や弓矢の音が起こっても開けるな。開ければ生まれる子は早死にする。我は祖母嶽大明神なり」と言って死んだ。穴に残った鱗は惟治の守り神として身につけられたという。歌姫は卵を生み、太郎・次郎・三郎と名づけた。次郎が後の佐伯惟治である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。