三枚岩の穴で苦しんでいた大くちなわ
どんな伝承か
温泉から川を隔てた向かいの谷に滝があり、土地では大滝さんと呼んでいる。滝のそばには三つの岩が重なり合って大きな穴のようになった場所があり、三枚あるので三枚岩というのだそうだ。その穴には大きな蛇が棲んでいた。岩の上手には今も屋敷の跡が残っており、そこには分限者が住んで娘が一人あった。三枚岩の蛇はこの娘に惚れ、男の姿になって毎晩通って来る。素性を確かめようと、娘はある夜そっと男の着物の裾に糸を結んでおいた。翌朝その糸をたどっていくと、糸は三枚岩の穴へ入っており、穴の中では糸を通された大蛇がひどく苦しんでいたという。
原典より
<高木―「蛇森」柳田―「蛇ヶ淵」>これは、温泉から川をへだてた向こうの谷の話で、滝がありまして、それで大滝さんと呼んでいるのでありましょう。—— 日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。