山根の紙漉きに持ち込まれた銀札偽造の企て
どんな伝承か
鳥取県の山根と河原は古くから和紙の産地で、その起源は遅くとも一六世紀末までさかのぼることが資料で確かめられている。幕末の嘉永四年、山根村の紙漉き業者のもとに、銀札紙の漉き立てを依頼してきた不審な者がいた。ほど遠からぬ酒津村に逗留していた雲州杵築市場町の梅松という男である。その筋が調べたところ、雲州でのみ通用する銀札、すなわち各藩が発行する銀貨代用の紙幣を偽造するつもりであったことが判明し、梅松は入牢となった。著者は、紙幣か穴あき銭かの違いはあれ通貨の偽造は昔もおりおりあったのだろうと記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。