甘酒屋横丁で泡を吐く青年
どんな伝承か
昭和の初め、著者は内務大臣となった安達を人形町のダンスホールへ密かに案内した。その帰り、甘酒屋横丁の角で自動車に乗ろうとすると、勤め人ふうの若い男が二人、互いに抱き合うようにして路上に転がっている。懐中電灯を向けると、口から石油のような色の泡を噴き、ひどく苦しんでいた。当時は知覚が麻痺するような粗悪な酒が出回っており、著者は大臣夫妻に、こうした者は保護検束で留置場に転がされるだけで、十日ほど前にも心臓麻痺で死んだ例があると告げた。ほどなく各警察へ酒類一斉検査の厳命が下った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私の心霊術(長田幹彦・1955年(昭和30年))
『私の心霊術』は、長田幹彦が昭和三十年に著した心霊研究の随筆集である。死後に残る霊や地獄・極楽をめぐる考えを述べ、熊本の家系や安達謙蔵との交わり、東京放送局の文芸顧問だったころの回想、霊友会など戦後の新興宗教への批判、前著『霊界』への反響と自らの信仰を語る。「心霊科学の来世観」「霊界の構造」「ぼくの信仰」などの章からなり、末章「ある霊媒の生態」では霊媒服部との実験とそのトリックの顛末を描く。