開聞山縁記が伝える千寿丸の水死
どんな伝承か
『頴娃郷旧跡帳』は開聞山縁記を引いてこう伝える。ここに千寿丸という一人の童子がいた。嘉吉三年六月朔日、新発意の僧に伴われ、蓮の葉と花を摘もうと鏡の池のほとりの樹の下へ至ったところ、思いがけず池水の中に沈んでしまった。魍魎の仕業かと推し量った師は、弟子である多聞寺の快財法印に命じ、池のほとりで不動尊の護摩法を修めさせた。するとしばらくのうちに池水は涸れ、その水は他の地へ移って池となった。いまの鏡池がこれである。先の池は涸れ、その底には童子の遺骸が端座し、そばに魍魎の死骸があったという。今この池を本鏡池と呼ぶ。童子の追善のためその跡に石塔が一基建てられ、今に至るまで残っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。