疋石野大明神と炭焼き別当の黄金
どんな伝承か
疋石野大明神の由来を記した条である。昔、小代山の麓に住み、炭を焼いて貧しく暮らす男がいた。そのころ内裏の姫に縁組がなく、観音が夢に、姫の夫は肥後国小代山の麓で炭を焼く別当だと再三告げた。姫は女房十二人、侍四人を伴って肥後へ下り、別当を訪ねる。炭薦を編む重しに使う石塊の出所を尋ねると、山にいくらでもあると言う。行ってみれば黄金がおびただしく、家の水石や踏石までみな黄金であった。姫は男と結ばれ、その金を里へ出して栄え、内裏へも献じて石野大長者の官名を賜った。のち菊池殿が宝物を求めて断られ、一族を焼き討ちにして滅ぼしたが、祟りを恐れて社を建て疋石野大明神と号したと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。