日を招き返した長者と焦土の岡
どんな伝承か
『肥後国誌』の長者屋敷の条である。用明帝の時に富み栄えた者があり、禁裡に奏して長者の号を賜り米原長者と号した。奴婢牛馬は千を超え、菊池谷から山鹿郡茂賀の浦まで田三千町を耕地とし、毎年これをただ一日で植えることを誉れとしていた。ある年、半ばまで植えたところで日が西の山へ傾いたので、長者が金の扇で招くと日輪は竿の長さほど返った。それでも植え終わらず、長者は油樽三千を出して山鹿郡の日ノ岡山に注ぎ、火をつけてその光で苗を植え終えた。日輪を招き返した天罰として、その夜に火輪が出て屋敷も倉も灰燼となり長者は滅びた。以来日岡山は焦土となって木が茂らないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。