にらみ潮と日招きで掘り抜いた瀬戸
どんな伝承か
清盛は姫のために厳島に美しい宮殿を造り、さらに厳島への航路を開こうと、音戸の瀬戸を一日で掘り抜く決心をした。三百の人夫を督して工事を急がせたが、潮がすさまじく差してきた。清盛が凄い眼でハッタとにらみつけると、その形相に潮も逆に後へ引き返した。安芸郡音戸町一帯ではこれを清盛のにらみ潮と称し、今も満潮時に起こるという。清盛はさらに山上に駆け上がって太陽をにらみ、金扇をさし上げて「日輪よ、わが権勢を恐れないか、返せ返せ」と絶叫した。すると太陽が徐々にもとに帰り、再び夕陽の沈むころまでに工事が完了したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。