若胡屋の白壁に残る禿の血の手形
どんな伝承か
江戸時代の中頃、大崎下島の御手洗港にあった大きな遊郭、若胡屋で凄惨な事件が起きた。当時の遊女は鉄粉を煮て染料にし、歯を黒く染めて馴染み客の前で人妻を装う習わしがあったが、ある日、禿と呼ばれる幼い雑用係が差し出したお歯黒がうまく乗らなかった。客を待たせて苛立った遊女は、煮え立つ鉄粉水を禿の口へ無理やり流し込み、幼女を死なせてしまう。部屋の白壁には、苦しんで黒い血を吐いた禿の手形が焼き付いたように残り、どうしても消えなかったという。以後、遊女が鏡台に向かうたび禿の亡霊が現れてお歯黒をせがみ、百人を数えた遊女も一人また一人と欠けて店は廃れた。建物は幕末に隆法寺となり、戦後は引揚者住宅を経て町の集会所になっている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊大全(中岡俊哉・2000年(平成12年))
『心霊大全――20世紀の超自然現象世界』は、中岡俊哉が二〇〇〇年(平成十二年)に著し、ミリオン出版から刊行した超常現象の総覧である。日本各地と世界各国の怪奇現象・伝説・心霊の地を県別・国別に紹介し、心霊写真・自動書記・憑依などの心霊現象、臨死体験と輪廻転生、透視・念力などの超能力、手かざしの治療を解説する。全六章から成り、巻末に著者インタビュー、著書・ビデオ作品一覧、あとがき、著者略歴を付す。