糸満の漁師を連れ回した遊女の幽霊
どんな伝承か
ある夏の夜、糸満出身の漁師の中年男が、酔ってビッチン山の榕樹の根元に小便をすると、遊女らしい美しい女が親しげに寄ってきて、自分の店で飲み直そうと誘った。女はカマルーと名乗り、店は月見亭だという。肩を抱いて歩くうち、いつの間にか一の橋に来ており、さらに気づけば山のふもとにいたので、男は女が幽霊だと悟った。村へ帰せと迫ると、宙を飛ぶような足取りで登野城部落に入った。男は水を飲んでくると偽って逃げ、灯のともる農家に転がり込んだ。豆腐を作っていた主婦が戸口に塩をまくうち一番鶏が鳴き、男は命拾いをしたという。
原典より
意識をとりもどした漁夫は、あたりを見廻していたが、山のふもとにきていることを知ると、はじめてその遊女が、幽霊であることがわかった。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。