七村に残った小少将松の塚木
どんな伝承か
曽於市財部町の七村には、かつて小少将松と呼ばれる二本の塚木があった。今は枯れ、一本の杉が二股に分かれて残るばかりである。天正の頃、都城の領主北郷時久の時代に、北郷家の家臣桑山刑部と、同じ家に仕えていた小少将という女房が深く想い合い、やがて小少将は身ごもった。当時は自由な恋が許されず、二人は天正元年八月七日の夜陰に紛れて逃れ、柳井谷から六道原へ出て、畩ヶ山を越えて七村へたどり着く。在家の瀬戸山を頼ったが、瀬戸山家は都城へ通報し、二人は追手に取り囲まれた。刑部は万策尽き、まず小少将を刺し、自らも自刃した。小少将は飯野の出であったから、女の身なら咎められまいと故郷へ帰るよう刑部は勧めたが、聞き入れず共に死んだと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。