鶴の恩返しと宇土の鶴見塚
どんな伝承か
醍醐天皇の御世、延喜元年、宇土郡石橋村の御門何某という貧しい夫婦がいた。大晦日、夫は妻の織った絹を売りに出たが、途中で罠にかかった鶴を憐れみ、絹と引き換えに助けて放した。その夜、一人の美女が宿を求めて訪れ、三粒炊けば釜に満ちる米と、いくら織っても尽きぬ絹の出る筒を差し出し、養女となって孝養を尽くした。国主に召されそうになり科料千両を課されると、養女は木原山の鶴の葉千枚を黄金に変えて納めた。やがて自らが助けられた鶴だと明かし、白鶴となって北へ飛び去った。夫婦はこの地に千部経を納め、塚を築いて鳥類の苦患を祈ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。