機を織る娘が落ちた鹿浦川の松淵
どんな伝承か
伊仙町の鹿浦川の下流の橋から五百メートルほど登った所に、松淵といわれる十平方メートルほどの深い淵がある。淵の右岸には平らな八畳敷ほどのハタムンイョウという岩穴がある。昔、阿三村のマツという娘が阿権村の某家に奉公に行っていた。マツは実家から毎日通い、岩穴に機を持ちこんで、朝は早く家を出て寸時を惜しんで織り、夕方の帰りにもまた織った。ある日、あとわずかで織り終わるのが嬉しく一心に織るうち日が暮れ、やっと織り終えたときはすっかり暗くなっていた。急いで川を渡ろうとして足場を踏みはずし、下方の淵に落ちこんで溺死した。以来、村人はこの淵をマツブキ、機を織った岩穴をハタムンイョウと呼ぶようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。