牛ごと沈んだ名子と下地島の浮き田
どんな伝承か
下地島の北寄りに浮き田という遺跡があり、今はユブ田ともユルズ田とも呼ばれる。ある正月の朝、名子は主人の役人から、湿り具合がよいので牛を引いてオコキ田を耕し、正月は夕方にせよと命じられた。逆らえる身分ではなく、名子は泣く泣く田へ向かう。村の者が晴れ着で家族そろって祝うなか、自分だけが酷使されるのを嘆き、こんな人生を送るより死んだほうがましだと口にした途端、すさまじい音とともに地面が沈み、牛もろとも消えたという。田は二町歩ほどあり、草の生えた表面は人が乗るだけで三十坪ほども揺れたので動田とも、牛が深穴に落ちて泥に吸い込まれたことからユブ田とも呼ばれた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。