耳のない権九郎獅子
どんな伝承か
大槻町の殿町の矢田部家に、右の耳のない獅子頭が伝わる。厄払いの神楽獅子で、村の人々は権九郎獅子、権九郎さまと呼ぶ。昔、村内に産の肥立ちが悪く体の弱い子がいたが、ある日、獅子が家の中をのぞき、そのまま姿がすっと消えると、子はみるみる丈夫になったという。昭和六、七年ころ、村内で十数人が腸チフスにかかったときにも、この獅子頭を持って村中を練り歩いた。また日出山の重太夫神楽が水戸へ興行に行った折、興行先の火事で重太夫の泊まった宿だけが焼け残り、焼跡に獅子頭の耳が残っていた。獅子が火を消したのだという。
原典より
大槻町の殿町の矢田部家に獅子頭があり、この獅子に右の耳がない。—— 郡山の伝説(ふるさとの文化財調査事業・昭和六十一年(1986)刊/監修 大島建彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
郡山の伝説(ふるさとの文化財調査事業・昭和六十一年(1986)刊/監修 大島建彦)
福島県郡山市(旧安積郡・田村郡域、湖南・熱海・三穂田・逢瀬・西田・中田ほか各町)に伝わる伝説を、木/石・岩/水/塚/坂・峠・山/祠堂/家・村/祭礼・行事の八部門に分類して集成する。坂上田村麻呂や阿古陀媛・采女伝説・萩姫、源義家ら前九年の役の人物伝承、淵や池の主・龍神・河童、弘法大師の清水、稲荷・観音・地蔵の霊験、長者伝説や埋蔵金、隠れキリシタンなど、郡山の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を伝承地つきで網羅する。